【跡部】All′s fair in Love&War
第21章 おわりのはじまり(後編)
「こっちこっち、守河!」
放課後になってすぐ、ジロちゃんに手を引かれるままに、学園内の一番外れで広大な敷地を持つテニス部に足を踏み入れた。コートをぐるりと取り囲む緑のフェンス、そしてその外側を更に取り囲む女子生徒の壁。マネージャーは許可制だ、と聞いていたが成程、と納得しながら先へ進む。
「確か、跡部は奥のコートにいるって言ってたなー」
「あとべ?」
「そそ、俺の幼なじみ!すっげーやつなんだ!」
跡部、という名には聞き覚えがあった。千花ちゃんの話にも、何度か出てきたような気がする――確か、英語が凄いとかなんとか。彼女の口から個人の名が出されたのはそれきりだったから、引っかかっていた。その内千花ちゃんのクラスに見に行ってみよう、と思っていたけれど、此処に居るなら話は早い。
「いたいたー、アイツが跡部だよ」
ジロちゃんが指差す先、彼の周りは明らかに空気が違っていた。コートを取り巻く女子生徒たち、だけでは無く、他の部員達も、皆が見つめる中。その視線を受け止めながら、ボールを追いかけている。
自分より遥かに大きな、先輩らしき選手が放った打球を難なく打ち返し、まるで魅せるように、手をあげると。周りの皆が自然とどよめき、拍手を送っている。
「うおー、あとべーっ!マジマジすっげー!」
ジロちゃんは興奮しきりで、賛辞の声を惜しまない。確かにその言葉通り凄い人なのだろう、けれど。何だか――
「よお、ジロー。ソイツが言ってたマネージャーかよ」
「おつかれ、あとべっ!そーだよ、同じクラスの守河!」
一試合終え、こちらに近付いてくる跡部。まるで値踏みするような視線を向けられ、思わず片眉を上げる。
「ジローがいいなら、いいんじゃねーの」
「サンキューあとべっ!あともう一人来るんだっ、守河の友達なんだって」
「そうかよ。俺様は練習に戻るが、ジローはもう一人が来たら色々説明してやれ」
「りょーかいっ!」
どうやら、何かしらのチェックは終わったらしい。そして初めの直感通り、どうやら跡部クンと私は合わないらしい――恐らく向こうもそれを感じ取ったのだろう、何かを言いかけるような素振りをして、止めるのが見て取れた。