第2章 *:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽
【透明な日々 1】
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「松本くん、ホール出てくれる?」
「あ、はい」
オーナーに呼ばれて、
着けてた前掛けを外すと厨房を出た
50席ほどのイタリアンレストラン
決して広くはないけど、
こじゃれた雰囲気とリーズナブルな値段で、毎日店は満席だった
学校が終わってから、直行で立ち寄り
バイトし始めてから、3週間になる
キッチン勤務で入ったものの、何故か良くホールに駆り出された
本来なら白衣にコック帽、という出で立ちのはずが
俺は、ウェイターの格好に前掛け、というスタイルが定番になっていて……
その時の状況で、ホールとキッチンを行き来した
「お前がホール出ると、女性客のオーダーが増えんだよ」
「まさか」
オーナーの冗談に愛想笑いしながら、
ベルの鳴ったテーブルに向かうと
笑顔で声を掛けた
「ご注文はお決まりですか?」
「はい///」
女性客2人が、メニューを指差しオーダーする
それをひとつひとつメモしながら、空いた椅子に置かれた紙袋に気付いた
麻色のそれには、見覚えのあるロゴが並んでて
ズキンと胸が痛む
“すごく似合ってますよ”
お客さんが選んだ服を、太陽みたいな笑顔で袋に包んでた
結局、俺は
雅紀さんに会いに行けなかった
あんなにいい人を疑って……
後ろめたさと、
"真実"を受け入れられなくて……
希望と絶望
その狭間で、
それ以上を知る事にも、
本当の意味で受け入れる事にも、
俺は、鍵を掛けたんだ
俺は、
何も、知らない
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