第2章 *:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽
【白い春】
潤はいつもと変わらなかった
もしかしたら
聞いてなかったのかも知れないし
聞いてないふりをしているのかも知れない
それならそれで、きっと平穏な日々が訪れる
俺はまた、潤に甘えてしまうんだ
"あの時のように"
「良かったね」
「良かったのかな……」
「良かったんじゃない?」
いつものホテル
ベッドに腰掛け、智くんは紫煙を吐いてる
俺の、独り言のような話に、頷きながらそう応えてくれた
「前に…進まなきゃなって思うんだ。だから…」
視線が合っただけで、
俺が言おうとしたことを全て察してるようだった
「良かったね。
俺に変な気なんか遣わなくていんだよ。
…ユウさんには世話になったから」
最初は、店の権利やら相続の件で会い始めた
そのうち、この人の纏う柔らかな雰囲気に惹かれていて
女相手だと反応しなくなったことを打ち明けたことがキッカケで、初めて関係を持った
潤を守っていきたい……
未来を歩いて行きたい
そう思いながらも、
過去からなかなか抜け出せなくて
バランスをどうにか保てたのも、智くんがいてくれたから
「寂しくなったら、またおいでね」
「…智くん」
「俺は、ずっとここにいるから」
最初は、寂しさを埋める為だけの手段だった
雅紀と重ねた事もあった
だけどね。
こうして、何年も繋がりが持てたのは
「ありがとう」
智くんだったからだよ
歳を重ねた分だけ、気付いた事がある
こんな俺でも、
もしかしたら、やり直せるんじゃないかって
いろんな人との出会いや出来事で、
少しだけ、世界が広がった気がする
穏やかな時が流れた
いつもの朝だ
初春を迎えた、
まだ少し肌寒い日だった
澄んだ青空は、
雲ひとつなく、永遠に広がっていて
忙しなく家を飛び出した潤の部屋が、開いたドアから丸見えになっていた
昔買ってあげたプラモデルが、
相変わらず飾ってるのに気付いて
なんとなく部屋に足を踏み入れた
だけど、机の上に重なった雑誌
付箋のついたその存在が
季節が戻ったかのように身体を強張らせた
潤、やっぱりお前は
俺の元を去ってくのかな
.