第2章 *:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽
【labyrinth 1】
帰って来たばかりの翔は、イラついた様子で、
近寄りがたい雰囲気を醸し出していた
仕事で何かトラブルがあったのかな……?
人当たりいいし穏やかに見えるけど
家では、こうして感情が露になることがある
それはそう珍しいことじゃないと思うけど
こういう時は、
ひとりにして、そっとしておくのが一番だ
リビングのテレビを消して、もう寝るわ…と声を掛けると
翔は頷くだけで、目も合わさなかった
……よっぽど、機嫌悪ぃんだな
リビングを背に、ドアを閉めて…自分の部屋のドアを開けた時
「……」
確かに聞こえて、思わず足を止める
"雅紀、あのさ?
どうして嘘ついた?
潤にああ言えば、すべて解決すると思った?"
苛立ったような、尖った声に、空気が固まる
……雅紀さん?
嘘ついた?
直ぐに蘇る、この前の出来事
忘れようとしたって、直ぐに消せる訳ない
ドア越しに廊下まで響く声は
低く…冷たい
だけど、それ以上に信じられない内容は、
思考も気持ちをも強張らせ、鼓動だけが速まる
翔は…
何、言ってンの?
頭ん中がぐちゃぐちゃで
いろんな場面が脳裏に過る
雅紀さんの子供みたいな笑顔と、裏腹な俺を見下ろす男の顔
あの店で見た、男同士が絡んだ影像
翔と過ごした何気無い毎日と
ここ数日の、どこか不安定な、らしくない顔
ねぇ……?
何が真実で
何を信じたらいいの
聞きたくないのに、
翔の言葉が、耳に焼き付いて離れない
コレが……俺が知りたいと願ったすべて?
ドアノブに手を掛け、
部屋の中に入り、力無く身体を滑らすと
ぺたんと座り込んだ
あの店で、
翔と…雅紀さん?カズさんも?
何が、……あったんだよ
自然と震え出した掌を、ぎゅっと握り締め
ただ、それを見つめてた
.
いくら考えたって、
答えなんか出やしない
俺は、明日から
どんな顔をして、翔に会えばいい?
.