第2章 *:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽
【さよならの背中 2】
「こうして酒飲むなんて、俺らも大人になったよね」
とりあえず乾杯なんかして、グラスを傾けた
沈黙が恐くて、懐かしい記憶を辿る
しょーちゃんは、あの頃みたいに笑ってくれるけど、
ホントは無理してるの、ちゃんとわかってる
今だって、必死にいろいろ考えてる
潤くんに過去を話した理由も
今日、俺を呼び出した理由も
カズに話してまで、
ふたりで会いたかった理由が、俺にはわかんないよ
「雅紀」
しょーちゃんの赤色のカクテルが空になって
トン、とテーブルにグラスを戻すと、急に名前を呼んだ
「……な、に?」
戸惑ってるのに気付かれないよう、口角を上げる
しょーちゃんは、おっきな瞳を細めて、
うんと優しく笑うけど
なんで、……泣きそうなの……?
俺、傷付けること言った?
昔話ばっかしたから、
哀しいこと思い出させちゃった?
「ホントは言うつもりなかったんだ。
だけど……」
言葉ひとつひとつを
聞き溢さないよう、黙って息を飲んだ
「好きだよ。もうずっと……」
予想しない台詞に、
目を逸らすことも出来なくて
応える言葉も出てこない
「驚いたろ?当たり前だよな。
お前にあんなことしといてさ……
お前は相変わらずだな。
あの頃と何にも変わらない」
そんなことない
俺は、やっぱり変わったよ
あの頃みたいに
きっと上手く笑えてない
「しょーちゃん、俺っ」
「返事しないで」
「…っ」
「わかってるからいいんだって。
言っておきたかっただけだから」
奥歯を噛み締めて、
泣くのを必死に我慢した
しょーちゃんの気持ちにも気付いてなかったし
あの頃からずっと抱えてたなんて、想像さえつかなくて……
だけどきっと、しょーちゃんは
俺が笑う顔が好きだったのかなって思うから
だって、俺が笑ったらおんなじに笑ってくれてたでしょ?
"最後"が、
泣いた顔にならないように
哀しい過去が少しでも塗り替えられるように
やっと、声を出した
ちゃんと笑えてるかな
そうだといいんだけど
「ありがと。
…しょーちゃん」
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