第2章 *:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽
【侵食 1】
予定時間より、15分早い
重厚なクラシックデザインのドアを開け
薄暗い店内に足を踏み入れた
ジャズが流れる、落ち着いた空間
皆、それぞれの時間を過ごしている
カウンターを見渡し、
その姿を確認して、小さく息を飲んだ
直ぐに俺に気付いた相手は
「……早いじゃん」
カウンターに頬杖をついて、笑顔を向ける
待ち合わせたはずの人物とは違うのに
俺は何故か
それほど驚いてなかった
空いた隣の席に腰を下ろし
目の合ったバーテンダーに、ジンフィズをオーダーする
「驚かないの?」
そうだよな
普通なら、驚くはずだ
「…驚いてるよ?」
「嘘ばっか」
俺の言葉に鼻で笑って、
琥珀色の液体を流し込んでる
「なぁ…」
カウンターを滑らすように、
差し出されたグラスを手にした瞬間
二宮が話し出す
「今更雅紀に会って、
どうする気だよ」
両手に納めたグラス
ぎゅっと力が籠る
ゆっくりと覗いた表情は、
口角を上げているのに、ちっとも笑ってはいない
瞳の奥は冷ややかだ
「どうする気って…
ただ会いたかっただけだよ。
潤の事で話したいことがあったから」
「潤くんね…」
意味ありげに吐かれた台詞は
胸の奥に押し込んだ、俺の想いに気付いてるように思えた
頭の回転もいい上、
何事にも鋭いコイツなら、気付いていても不思議じゃない
もしかしたらあの時から
俺自身さえ自覚してなかったあの頃から
気付いていたのかも知れない
お互いに、遠回しに話すことなんて望んでいない
それなら、単刀直入に
全て吐き出してしまった方がいいのかも知れない
「……二宮」
目を合わせなくても
痛いくらいの視線を感じる
「雅紀と、会ってもいいかな…」
シュワシュワと立ち昇るグラスの炭酸から目を離し
ゆっくりと、顔を上げた
予想通りの台詞だったのか、
怖いくらいに表情は変わらない
「……頼む。
1度でいいから、
アイツと会わせてくれ」
自分で驚いた
俺はなんて、
情けない声をしているんだろう
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