第2章 *:.。..。.:+・゚・✽:.。..。.:+・゚・✽
【欠けた月 2】
いくら本当に忙しかったとしても、
今の潤にとっては、
俺が"何か"を避けてるように映るだろう
「ただいま」
リビングのソファーに座ったまま
潤は、あからさまに驚いた顔をして振り返った
ただ、早く帰って来ただけなのに
潤、お前は一体どうしたい?
寂しいんじゃないか、
もう、何も知らないままじゃいられないのではないか……
そう言われれば、
迷いは生じるし、そうなのかとも思う
だけど、
今のままじゃ、
どうしてダメなんだろな
「今日、早いね
メシ食ったの?」
「……イヤ、まだ」
「じゃ、温め直すわ。待ってて…」
「ああ。ありがと」
ジャケットを脱ぎ、
ネクタイを緩めながら、
手際良く準備してくれる潤の後ろ姿が、ひどく遠くに見えた
大きくなったよな……あんなに小さかったのに
核心を突かれたら、
多分もう、誤魔化す事は出来ないんだと悟った
それが嘘だとわかったら
また真実を知ろうとするだろうし
それを隠した俺を、
アイツはどう受け取るだろう
すべてを知る事が、
幸せになるとは限らない
この世には、知らない方がいい事なんて
きっと、数え切れないほどあるはずなのに
それをお前が理解するには、まだまだ幼過ぎるのか……
それとも、
俺と過ごした時間が、まだ足りないのか
それは、遠い未来にしか
わからない答えだけど
でもな?
この現実は
確実に今を、壊してしまう……
きっとね
「ロールキャベツ。
塩野さんにリクエストしたんだ。
久しぶりだろ?」
「ホントだな」
アツアツのロールキャベツが乗った皿を、
ダイニングテーブルに置いて
俺の向かいの席に、潤が座った
湯気の向こうで
タイミングを伺う潤の顔を見てられなくて……
黙々と食べ終えると
ワザと、不自然に目を合わせた
素直に口を開いた潤は……
明らかな嘘を口にしたけど
俺は……ただ、
何も気付かないフリをして
嘘みたいな現実を
潤に突き付けた
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