第1章 ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
【かけら】
「彼女……いないんだ?
仕事、忙しいんだろね」
「はぁ…まぁ」
「カタいっつーか……
真面目だからさ?その辺も慎重なんじゃない?
俺と違ってさ」
一瞬だけ不敵な笑いを見せ、前に向き直す
「カズさんって、遊んでたんですか?」
「俺モテるからねー(笑)
とっかえひっかえ?」
「そんな風に見えないですよ?」
「そう?(笑)」
なんか、上手くはぐらかされた気がしないでもないけど……
「あのマンションでいいんだっけ?」
「はい」
徐々にスピードが落とされ、マンションの前に停まった
「ありがとうございます。
あの…翔、呼びましょか?せっかくだし」
モヤモヤした胸の内
カズさんは、どう応えるのか……
「アイツ、寝かせたまんまだし…今日は遅いしさ?
また改めて、出直すわ」
「そうですか?」
「櫻井によろしくね」
当たり前のセリフも
常識的な対応も
どうしてこんなに、
違和感を感じてしまうんだろう
カズさんと別れて部屋に戻ると、
翔が、シャツとスラックスのままで玄関に現れた
「ただいま」
「……送って貰ったのか?」
「うん。マンションの前まで」
「そか…アイツも忙しいのに悪かったな……」
「俺も……断ったんだけどね」
「今度、お礼しないとな……」
俺に背中を向け、リビングへ戻る翔
ねぇ
もしかして俺は……
何かに気付いてしまった?
翔は……
そう呼んだら、
どんな顔をすんの?
「しょーちゃん……」
立ち止まる背中に、言葉を続けた
「ねぇ……
俺に、そう呼んで欲しいって言ったの、覚えてる?」
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