第1章 ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
【vogue】
「潤くん、おかわりは?」
空になった器に気付いて、カズさんが声を掛けてくれた
「あ、いただきます」
「あ~っ、俺もおかわり♪」
「なに甘えてんだよ。自分でやれよ」
「ええ~っ」
この2人の空気感って
やっぱり、"違う"
「あ、雅紀、お前さ?
洗濯物また、ためてたろ!」
「え~?そうだっけ?」
「せめて洗濯機入れろや。部屋にためんのヤメて」
「はいはい」
誤魔化すように笑って、
睨んでるカズさんと目を合わせない雅紀さん
そんな場面でさえ、
ふたりの仲が伝わった
結局……俺の勘違い
全てはただの憶測
てっきり同じ子を好きだったんだと思ってたけど
「潤くん、櫻井とはさ……ウマくやってんの?」
「…まぁ、普通に?」
「…そっか」
口元を緩ませたカズさんと
嬉しそうに笑った雅紀さんの姿は
やっぱりどこか、引っかかった
俺らの事情も、関係性も知ってんだな
しばらく会ってないのに?
「翔もいろいろ忙しいみたいだけど
せっかくだし、またみんなで会ったらいいですよ」
「……だね。そうするよ」
そう、応えてはくれたけど、
それは表向きだけのセリフに聞こえた
それに、何だろ……
俺ん中で何かが引っ掛かってる
「しょーちゃん、なんかいかにも出来る男って感じしたよね~」
「お前と違って頭イイからな」
「わざわざハッキリ言わないでよねっ」
なんだ……?
「潤くん!しょーちゃんってさ?」
そだ…この呼び方
昔の事すぎて忘れてた
ってか、俺は
この呼び方がイヤで、故意に止めたんだ
遠い日の記憶
泣いてる翔を見たのは、"あの日"以来だ
『しょーちゃんって、呼んでくれる?』
カズさんは、呼ばないんだな
雅紀さんは呼ぶのに?
まさか
まさかな……
一瞬過ぎったバカらしい思い付きに、苦笑いしてしまう
気付かれないよう、
箸を止めず、ひたすら食べた
だけど、
目の前のふたりが
現実として、存在してんじゃん……
雅紀さんが、楽しそうに話しかけてくれてたけど、
そればかりが気になって、曖昧にしか笑えなかった
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