第1章 ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
【アイツの正体】
エレベーターに乗り込むと
ますます緊張して、
どう挨拶しようかなんて考えた
いきなりお邪魔した上、
俺、手土産ひとつないじゃん
雅紀さんの後を着いて、ドアの前に立つ
「カズ!俺」
インターホン越しにそう言うと、直ぐにロックが解除された
促され開かれたドアに進むと
玄関先で俺を出迎えてくれたのは、予想外の姿だった
「おかえり」
口角を上げた、人懐っこい笑顔
小柄で色白で……
うん。可愛い……って、違うだろ
だから……誰だ?
頭に浮かんでた彼女像とは全く違う
「ハジメマシテ。潤くん」
「……はぃ?」
隣にいた雅紀さんに目線を向けると
当たり前に声を上げた
その言葉を聞いても、
意味がわからない
「潤くん、俺の彼女♪」
「え?
……は?」
「オマエ、潤くん
フリーズしちゃってんじゃん(笑)
言ってなかったのかよ」
「え?なんで?」
「ってか、なんで俺がオマエの彼女なんだよ!」
「違うの?(笑)」
楽しげに笑うふたりの側で、何にも言葉が出て来ない
えっと?
「ま、上がってよ?
こんなトコじゃなんだし」
「はぁ…」
頭に浮かんだ、クエスチョンマークは消えないまま
その人の後を着いてった
「カズ!いーにおいすんね!ナニコレ!」
「鍋だよ。見たらわかんだろ。……時間なかったし」
カズ……
カズ!?
っつーことはさ?
ポカンとしつつ、
思わずその人を、ジロジロと見てしまった
「ゴメンね?
アノヒト、バカだからさ。
ビックリしたでしょ」
テーブルの上に用意された食事に、ハシャいでる雅紀さんを見ながら
カズ……さんは、
困ったように笑った
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