第1章 ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
【アイツ】
「久しぶりだね!!」
沈黙を破ったのは、
雅紀さんだった
「……久しぶり」
応える翔の顔は、気のせいか緊張してるように見える
「え?…なに?
知り合い?」
「……ああ。高校ん時の同級生だよ」
まさかの偶然に
ビックリして思わず声を上げた
「マジ?うっわ!すごくない?」
まさかさ?
俺が選んだバイト先の店長と、翔が同級生だったなんて……
テンション上がんだけど!!
「しょーちゃん…元気だった?」
「ああ」
「そう、良かった!」
「お前も、元気みたいだな」
「うん。元気だよ」
「……アイツも、元気にしてんのか?」
「え……うん。元気にしてるよ」
「そっか……」
アイツ?
ふたりの会話を黙って聞きながら、引っ掛かった
遠慮がちな会話と雰囲気
妙な違和感
“しょーちゃん”と呼ぶ割には
ずいぶん長く会ってないんだな……?
「潤が世話になってるみたいで」
「世話って、こっちが助かってんだけどね」
ニコッと雅紀さんが笑うと
固まった翔の表情が緩む
「でも、びっくりしちゃった。
まさか、しょーちゃんと潤くんが……ね?」
「そうだな。
とりあえず、よろしく頼むわ」
チラリと俺を見たから
笑いながら、軽く頭を下げた
「じゃ…帰るぞ」
「え?ちょっと?
も、帰ンの?」
再会の余韻も程々に、
スタスタと歩き出した翔を、慌てて追い掛けた
助手席でケータイを弄りながら、
対向車が来る度に、映し出される翔顔を横目で見てた
黙りきったまんまだし
久々に会えて嬉しくねえの?
ワケわかんねぇなと思いつつ
同時に感じた、ふたりの距離感と違和感
それに、
……アイツ、って誰だ?
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