第1章 ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
【ふたりのカタチ】
いくら好きなモンに囲まれてても
仕事は仕事だ
慣れてないせいもあるけど、身体は疲れきってて……
ユサユサと肩から伝わる振動に、
ハッと我に返る
「っ!スミマセン!」
伏せた机から顔を上げると、ミキがクスクス笑ってた
「…ンだよ、ミキか」
ん~、と腕を伸ばして、また、机に伏せた
「もう。授業中は先生も呆れてたよ?
昼休みだし、起きてよ」
「も、昼?」
「お弁当作ってきたから、一緒に食べよ?」
「ミキが?めずらし!」
俺の言葉に軽く睨みながらも、
鞄から、赤いチェックの包みを取り出す
料理が得意じゃないミキが、
俺のために早起きして作ってくれたと思ったら
やっぱ嬉しい
「ウマいじゃん」
ちょっと焦げた卵焼きを食べながら、
ミキの、昨日はなかった、人差し指の絆創膏に気付く
「ホント?良かったぁ」
「うん。ウマいけどさ?指、大丈夫?」
「あ~、大丈夫だよ」
えへへと照れくさそうに、掌を隠して
ミキも同じ包みを広げ、一緒に食べ始める
「潤には適わないのわかってるけどね?
……やっぱり作ってあげたいじゃない?大事な人には」
「‥‥‥サンキュ」
そんなの、言われた俺のが照れんじゃん
……ミキが言うように、"大事な人には"って言うのはさ……
やっぱり、翔も思ってくれてんだよな……
あんな早く帰って来て、メシ作るなんて
かなり無理したはずだ
「どうかした?」
「ん~?何にも」
「そう?なんか難しい顔してたよ?」
「んなことねーよ」
たこさんウインナーを頬張って、
やっぱり翔には、
バイトの事を話しておこうと思った
家を出るつもりだってのは、まだ言えないけど……
やっぱり翔には、
これ以上、変な心配を掛けたくなかった
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