第1章 ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
【恋色】
「潤くんっ!ごめん!
コレの在庫確認して貰えるっ!?」
「ハイッ」
雅紀さんに言われて、ディスプレイと同じシャツを探しに
バックヤードに飛び込んだ
一応は整理された棚も、混雑時は状況が違う
バタバタと駆け回り
上から下へと視線を流す
「ないないない……っ
……あった!」
初めての週末は
秋物のセールが始まったせいで
次々と客がやってきた
とにかく無我夢中で
スタッフの邪魔にならないようにと
一生懸命頑張ったつもりなんだけど……
「ほい、お疲れ~」
休憩室の小さな机に突っ伏してると
雅紀さんが、冷たいペットボトルを差し出してくれた
「あ!ありがとうございます」
それを受け取り、蓋を開けた
「大丈夫?
忙しい時はね、あんな感じ。疲れたでしょ?」
向かいの椅子に座って、
ニコニコと笑ってる
「なんか、どーしていいかわかんなくって……
足引っ張りましたよね」
「何言ってんの!よく動いてくれるし、ホント助かったよ~」
お世辞だと思いつつも
優しい言葉に救われる
「もう時間だし。休んだら上がってね?」
「ハイ」
時計を見ながら、雅紀さんはペットボトルの蓋を閉じた
「俺らはあと一踏ん張り……ん?」
店内の音楽と混ざって
微かに響く機械音
ゴソゴソしながら、雅紀さんが携帯を取り出して
……誰かと話し出した
「……え?
うん。そう、遅くなる……
そーなの?……カズも?」
黙ってそれを眺めながら、
微妙に変わる雅紀さんの表情に気付く
「大丈夫だって!
最悪、ここ泊まるし。
なにぃ?寂しいってぇ?…あはは」
いつも笑顔で優しい人だけど
違う
細めた瞳は、トクベツだ
「ん。わかった!……じゃね~」
雅紀さんが携帯を切ったと同時に
思わず聞いてしまった
「今のって
……彼女さんっすか?」
「ん、まぁ…、ね」
別にからかったワケでもないのに
ひどく照れくさそうに笑った顔は
すごく、幸せそうだった
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