第1章 ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚ ✽.。.:*・゚
【不器用な背中】
家に着いてすぐシャワーを浴び
上半身裸のまま、冷蔵庫を開けた
冷えた炭酸飲料で喉を鳴らし……
空いた腹をごまかす
今日のメシ
どうしよっかな
週に3日は家政婦さんが来てくれるけど
今日は来ない日だし……
慣れない仕事のせいで身体はクタクタだし……
ピザでもとるか
携帯片手に立ち上がった時
玄関の方から物音がして、リビングのドアに視線を向けた
翔……?
いつもより、早くね?
近付いてくる足音に耳を傾け、様子を窺うと
……思っていた通り、翔が姿を見せた
だけど、いつもと違う様子に、思わず耳に当てた携帯を離した
「……どうしたの?
ナニ……ソレ……」
「ちょっ、潤っ!
ナニ黙って見てんだよ!手伝え!」
「お、おうっ」
慌てて、翔に近寄り、両手を塞いだ荷物を手に取った
「なんなの一体……」
いつものスーツ姿
だけど、両手にはパンパンに膨らんだスーパーの袋
「今日はさ、塩野さん来ないだろ?
……晩飯、作ろうと思ってさ」
ふー、って息を吐いて
荷物をダイニングテーブルに置いた翔が、
そう言って笑う
「………」
なんなの
料理なんて滅多に……
ってか、苦手じゃん……昔っからさ
「ナンだよ?その顔!
オマエ、信用してないな?」
「当たり前じゃん……今までどんだけ失敗して……」
俺が眉を潜めると
翔はジャケットを椅子に掛け、シャツを捲り上げた
袋から出した、にんじんやらジャガイモを
勢い良く出した水で洗い始める
あ~あ~
水、出し過ぎてっから
シャツ捲ったのに、すげえ跳ねてっし(笑)
シャツ姿の翔は
撫で肩が変に強調されて、
後ろ姿を見る度に、吹き出しそうになる
だけど、
キッチンに立つ似合わない姿に、暖かいモノが、込み上げてくる
たぶん、翔なりの、
……仲直りの合図、なんだろ?
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