第4章 ✽+†+✽――✽+†+✽――
【イチオクノホシ】
控え室のソファー
力無く横たわる和さんを見つめる雅紀さん
声を掛ける事も出来なくて、ただ黙って、壁際に立ってた
「……なんって、顔してんのよ。
あれくらい全然大したことないからね?」
呆れたような、軽いトーンの声が響くけど、
無理してんのは明らかだった
「よくやったじゃん。
打ち合わせ通りにさ?」
「……うん」
「それに、ほらっ
たまにはあんなプレイも、刺激あっていいじゃない」
「……うん」
話し続ける和さんと、
それに頷く雅紀さん
たぶん、ここにいる俺に気を使って
そんな風にしてくれてんだと思った
雅紀さんなら、ホントは泣いて、和さんを抱き締めるはずだ
和さんだって、
演技とはいえ、辛かったに決まってる
見ている方が耐えられなくなって、
ドアに向かって歩き出そうと背中を向けた時、
和さんの声が響いた
「潤くん、
俺らが出来んのはここまでだからっ」
立ち止まり、
目線を向けた先には……
優しく笑う、
和さんと雅紀さんの顔
途端に、
一度止まったはずの涙が溢れ出す
「翔ちゃんの側にいてあげてね」
「ちゃんと捕まえとけよ(笑)」
正直、そうすることしかわからない
今まで通り、
いや、今まで以上に
翔の側にいたいって思う
過去なんて関係ない
ひとりぼっちの幼い俺を救ってくれたのは
翔なんだから
その事実だけで充分だ
声に出来なくて、
何度も首を縦に振った
そして、
ゆっくり開いた背後のドアから
翔が、入ってきた
.