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DIVE TO BLUE 【気象系BL】

第4章 ✽+†+✽――✽+†+✽――


【どこにでもある唄 】






痺れた身体を震わせながら、上体を起こして


繰り広げられる場面から、目が離せなかった





何も知らない俺が


聞いたままの話を鵜呑みにして、


勝手な行動が招いた事態





辛い想いや記憶は、

月日が経てば薄れるかも知れない



だからこそ、

傷口に塗り込むこの行為に、どれだけの意味があるのか







涙が止まらなかった



何もしてないクセに



何も出来ないクセに





喘いだ和さんの鳴き声は

聞けば聞くほど切なくて……




雅紀さんとふたり、

あんなに幸せそうにしてたのに……





それを全部、

俺が壊したんだと思った






どんな思いを抱いて、覚悟して、


この場に来てくれたんだろう






縋った俺に、和さんはただ笑って、



"大丈夫だから"

"何とかするから"



そう、言ってくれた









「もう放してやって」






頭上から降ってきた台詞に、目線を上げると


大野さんは黒服を退かし、俺に手を差し伸べた






感覚のない腕をどうにか伸ばし、掌を重ねる



汗ばんだ感触と微かな震えに、


いつも冷静に見えた大野さんの中身を、垣間見た気がした







「ごめんね。

潤くん」


「大野さん……」







そう言って、
雅紀さんと和さんの方を向いた






それと同時に、


怖くて見れなかった、
片側にいた翔が、そっと俺の肩に触れた







ゆっくりと見上げた翔は……




雅紀さん達を見つめたまま、泣いていた







あの日と重なる





マリア様みたいな綺麗な横顔




次々と溢れる涙は、頬を伝わり、止まることを知らない






辛かったね、翔


だけどさ、そろそろ気付いてよ





あの日


翔が繋いでくれた掌は、





もう、こんなに



大きくなったんだよ








翔の掌に触れ



強く、強く



握り締めた








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