第4章 ✽+†+✽――✽+†+✽――
【RIGHT BACK TO YOU 3】
薄暗い部屋が突然真っ暗になり、
スポットライトが一点を照らす
異変にざわつき出したギャラリーも
其処に釘付けになった
「ど……して……?」
にっこりと、人懐っこい笑顔を見せ
フロア中に、小悪魔的な視線を振り撒く
黒いスーツ姿を見るのは、
“あの日”以来だ
ドクン…と一際大きく心臓が跳ねた
「ねぇ…?
いつまでそんな姿、
お客様に晒す気なの?」
クスリと鼻先で笑い
小馬鹿にしたような視線が俺を見つめてる
「二宮……どうして…?」
俺らの目の前まで来ると、
ちょこんとしゃがみ込んで、首を傾げた
俺の問いかけには答えようともしない
「オーナーはオジサンだし、
相手は素人。
そんなのVIPルームじゃ盛り上がんないよ」
智くんの戸惑った表情から
これが、予想外の出来事だとわかる
「ね?
そう思わない?」
計算された笑顔でも
引き込まれる仕草は、きっと天性のもの
くるりと俺らに背中を向け、
苛立ちを露にした上客に近付き、膝まづいた
「僕じゃ、ダメ?」
猫なで声で甘えて
実年齢より、ずっと幼く見える顔は
此所の客がいかにも好むタイプだ
上目遣いで見上げ、
男の太股に、白く小さな掌を滑らせる
客のにやついた顔を見れば、
二宮がどんな顔で、その気にさせているのか想像できる
色褪せない過去とリンクして、脳裏にフラッシュバックした
「僕の、恥ずかしいとこ……見ててくれる?」
手繰り寄せた、客の掌に唇で触れ
二宮は、部屋の端に合図を送るよう、視線を向けた
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