第4章 ✽+†+✽――✽+†+✽――
【ボーダーライン 2】
会話の中、不意に出てきた名前
ユウさんを亡くして、翔くんの家族がいない事は気付いていたけど
そんな存在が居るなんて、正直驚いた
「父さんがいた施設で出会ったんだ。
両親とも、事故で亡くしてさ、
今、ふたりで暮らしてる」
「へぇ」
「案外、楽しくやってるよ」
はにかんだような、
ちょっと照れた優しい顔
それだけで、
翔くんが、どれだけ彼を大事に思ってるかわかる
「へぇ。そうなんだ」
笑ってそう応えたけど
何とも言えない感覚に、自分で戸惑った
「じゃ、こんな飲みに来てたらダメじゃん」
「え~」
俺は……どんな顔してた?
「待ってんじゃないの?
翔くんの帰り」
「大丈夫だよ。
智くんとは、仕事付き合いも兼ねてんだから」
「……」
深く考えちゃいけない
それだけはわかった
じゃなきゃ、自分が保てなくなる事、昔からわかってる
「とりあえず、
今日はコレだけにしときなよ」
手にしてるグラスを指差して、
俺も同じにビールを口にした
ボーダーラインが浮き彫りになって、
俺の中で、ふたりの距離が決まる
翔くん……
俺らは、いいパートナーだよね
大事なことには変わらない
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