第7章 ぬくもり
なお目線
『…喉が渇いた』
私はそう思い目を開けた。
「なお様!」
「あ、きの?」
『あれ?私、どうしたんだっけ?』
「なお様!また、無茶な事を!
秋野は…秋野は…」
顔を横に向けると、涙をポロポロと流す秋野の姿が見えた。
「わ、たし。いき…てる?」
「はい。」
秋野は少し微笑んでそう返事をくれた。
『生きてた』
心の中で呪文の様に唱えると涙が溢れた。
秋野がそっと頭を撫でてくれて、その優しい暖かさに益々涙が溢れる。
「なお!…やっと目が覚めたか」
気がつくと、秀兄と家康がいた。
「ひ…でにぃ」
「まだしゃべるな。やっと熱が下がった所だから…」
秀兄も頭を撫でてくれて、嬉しい気持ちが込み上げてくる。
「あ、の…」
「ほら、しゃべるなって言ってるだろ?」
秀兄は心配そうな顔をする。
けど、どうしても気になってつい聞いてしまう。
「い、くさは?のぶ、な、がさまは?」
「はぁ、そんなことより自分の心配だけしなよ…どんだけ治療させたら元気になんのさ、あんたは…」
家康が溜息まじりに言う。
「ご、ごめ、んなさい」
「家康!お前の天邪鬼もいい加減にしろ。心配してたくせに…素直にそう言えばいいだろう。」
「そんなこと…それより。戦は無事に勝ったよ。
信長様も怪我はない…あんたが庇ったからね」
家康は目の端を少し紅くして答えてくれる。
「あり、がと。い、えやす」
「つっ。別にいいし…それが仕事だから、兎に角安静にしててよ!熱が下がっただけで、傷はまだ治ってないんだから…」
そう一気に捲したてると、家康は部屋から出て行った。
「…ふっ。ふははっ」
秀兄が不意に笑い出す。
『えっ?なんか今おかしな事言ったっけ?』
私が見つめていると
「…いや、何でもない。」
秀兄はそう言って笑い過ぎて溜まった涙を拭いている。
「信長様も心配している。報告してくるから、良い子に寝てるんだぞ」
秀兄はもう一度私の頭を撫でると、外へと出て行った。
「さぁ、なお様。お薬を飲んでもう少し休んでください。」
秋野は、薬を飲ませてくれて、いつもの様に私の手を握ってくれた。
『暖かい…』
私は目を閉じて、そのぬくもりを感じながら、眠りについた。