第6章 本心
なお目線
『全然眠れなかった……』
あれから布団には入ったけど、眠りが凄く浅くて…。
「そろそろ出立の様ですね。」
秋野が後ろから声をかけてくれる。
「何も怖い事はない。信長様が守ってくれるからな。」
秀吉さんにそう言われたけど
『戦が怖くないなんて…ありえないよね…。殺し合いだよね。』
そう思いながらも、私はその時まだ戦の本当の怖さを知らなかった。
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「………。」
キンキンと高い音
地鳴りの様な馬蹄音
突き上げるような怒号
全ての音に私は無言で立ち尽くしていた。
この布一枚隔てた向こう側で、何が起きているのか。
それを知るには充分な音の洪水だった。
「どうした?」
信長様に声をかけられるまで、どれくらいたったのか?
それすらもわからない。
「…あ…」
声を出そうとしても、カラカラの喉からは何も出てこない。
「怖いのか?時期終わる」
信長様はそう告げると、また来た伝令に次の指示を淡々と告げている。
『…現実味がない。こんな事、テレビや映画でしか見たことないから、わからない』
怪我人が運ばれてきても、その血が血糊に見えてしまう。
そんな感じだった。
「信長様!
敵の将がこちらに向かっております!」
次の伝来がそう伝える。
「わかった。俺も出る。
貴様。ついて来い」
信長様は立ち上がると、私の手を掴み歩き出す。
「イヤ!」
掴まれた場所から鳥肌がざわざわと広がる。
手を振りほどこうとしても敵わなくて、気がつくと馬上へ抱え上げられていた。
「いくぞ」
そういうや否や、馬は疾風のように駆けていく。
『イヤだ。イヤ』
ぎゅっと目を閉じ、身体を硬くする。
「着いたぞ。目を開けろ」
私はその声に、目を開けた。
「あっ…」
気がつくと
音の洪水の中に
私はいた。