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『イケメン戦国』〜生きる〜

第5章 心をみつめて


第三者目線

「……今は…帰りたくないです」
小さな声が響く。

長い沈黙を誰もが受け入れ、なおの言葉を待っていた。
その答えに、秋野と秀吉はホッとする。

信長は、複雑な気持ちでその答えを聞いた。

『今は…か…。先はわからんという事だな』
そう考えて、何故か漠然とした不安に気がつく。

『何が不安なのだ』
その時、あの夜に見た絵を思い出す。

綺麗な微笑み

そして

『あの男』

信長は不安と共に、湧き上がる怒りに似た感情を必死に抑え込む。


「お屋形様」

秀吉の呼ぶ声に意識を戻す。

前を見ると、不安げに瞳を揺らすなおの顔が見える。

その顔にまた、苛立ちを感じる。

「して、貴様の用とはなんだ」
その苛立ちを隠す様に信長は問いかける。


「つっ……」
なおの瞳は潤み今にも涙が溢れそうだった。

『何故!何故!その様な顔をする…』

「話がないならもう終わりだ!」
信長は苛立ちをぶつける様に言い放つ。


「……なぜ……なぜ私を戦に連れて行くのですか」
声を震わせながらなおは問いかけた。

必死に涙を堪える様子が、また別の感情を呼び覚ます。

『此奴を手放したくない』

信長は、何でも自分の思うままに手に入れてきた。
反論も、反発も、全て肯定へ変えてきた。

『此奴も必ず手に入れる』

そう思うと少し胸がすく思いがする。


「貴様は幸運の象徴だ。俺に運を呼ぶ。それだけだ」
信長ははっきりと告げた。

「貴様は、黙って聞いておけばいい」
その言葉に、なおは堪えきれず涙を流す。

『恨めばいい…それがここに生きる糧になるなら……。
死ぬ事は許さん。貴様をそばに置きたい。
一時でも長く…』



本心は誰にも告げない。
そう思う信長自身も、何故この様になおを想うのか?
まだ、わからないでいた。

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