第32章 繋ぐ
なお目線
部屋に戻ると、難しい顔でお酒を呑んでる信長様が目に入る。
私はそっと信長様の隣に近寄ると、信長様の目が緩むのが分かった。
隣に座り肩にそっと頭を寄せる。その頭をそっと撫でてくれるのが気持ち良くて、目を閉じる。
「大事ないか?」
「はい。信長様も…大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃない…側を離れるな」
小さく呟いた言葉にびっくりして、頭を離すと信長様を見つめる。
そこには、苦しげに顔を歪める信長様の顔があった。
「皆はまだ楽しめ。もう…天主に戻る」
信長様は唐突にそう告げると、私を横抱きにし急く様に広間を後にする。
「お館様!お待ちください!」
後ろから焦った秀兄の声が聞こえたけど、追ってくる間もなくずんずんと進んでいく。
「信長様?!」
私の問いかけにも答えることなく、あっという間に天主へとたどり着くと、褥へと降ろされる。
膝立ちのまま私の横にいる信長様の顔は、まだ苦しげに歪んでいて私はその顔に手を伸ばそうと片肘をついて身体を起こそうとする。
「…なお」
「んんっ…ふっ」
伸ばした手を引き寄せられ、膝立ちに向かい合わせになった瞬間、唇をキスで塞がれる。
そのキスの激しさと裏腹に、後頭部と背中に回された手は優しくて、それに答える様に信長様の腰にそっと手を回した。
何かを求める様に、深くなるキスに少しずつ思考が奪われていく。
のぞみがお腹にいるからと、こんな深いキスは数える程しかない…。
「…んっ…信長…さま…」
気がつくと私は褥に横たわっていて、間近に信長様の顔が見える。
「なお…ずっと側に…」
近くにあった顔が見えなくなると同時に、首筋に小さな痛みが走りその跡を慈しむ様にそっと舌が触れる。
私の右横に寝転ぶと上半身だけが私の身体に覆いかぶさる。
器用に帯が解かれ、着物がはだける。
少しの寒さに身震いするけど、少しずつ緩やかに与えられる疼きに、抵抗することが出来ない。
「なお…」
耳元で囁かれた声が、甘い吐息とともに耳を犯していく。
「あっ…んっんっ…」
「相変わらず…チュク…耳が弱いな…」
ゆるりと耳に舌が差し込まれ、ぞわぞわとした感覚が耳から首へ、首から背へと伝っていき、それから逃れようと首を振る。
「逃げる事は許さん…」
信長様は腕枕をする様に、左手を首下に差し込む。