第22章 堕ちる
第三者目線
身に寒さを感じなおは身体を震わせ、目を覚ました。
目を開けても漆黒の闇が広がり、一瞬本当に目を開けたのかと何度か瞬きを繰り返した。
目が慣れてくると、身体を動かそうともがく、そこで手足を拘束されている事に気がつく。
『私…怪我人の所に行くはずで…そしたら…』
そこまで思い出し…自分の置かれた状況を理解する。
寒さとは別の震えが身体を襲う。
『逃げなきゃ…逃げなきゃ』
なおは、手足の拘束を解こうと身じろぎするが、それは固く結ばれていて身体を起こすことすら、ままならない。
ーガタンッ…ガタガタ
「目が覚めたか…」
小屋の戸が開いて男が入ってくる。
「…あなたは…」
それはなおに助けを求め、そしてなおを連れ去った男だった。
なおに近づくと、下を向いたなおの顎を上げ顔を覗き込んでくる。
「お前自身に恨みはないが、ある方のご命令でな…」
ニヤリと笑うその顔に、なおは血の気が失せて更に身体に震えをおぼえる。
「夜が開けるまで、どうせ動けない。あのお方に届ける前に少し遊ばせてもらうとするか…」
そうなおに言葉をかけると同時に、複数の人が小屋へと入ってくる。
「ひっ…」
なおは動けない身体を何とか動かそうと、身をよじるがあっけなく捕まってしまう。
「い、いや…いやぁ…っつ…」
叫び声を上げようとしたなおの頰に、強い痛みが走る。
「黙れ」
叫ぶのではなく、地の底から湧き上がってくるような低い声に、なおの思考も身体も恐怖で停止する。
かつて味わった恐怖の日々とリンクし、なおの身体は己の身を、心を守るため弛緩する。
それを服従と受け取った男は、周りに目配せすると、手足の縄を解き着物を一気に暴いていく。
「信長に愛された女を抱けるとな…」
男の呟きに、なおは反応する。
『なお』
信長の自分を呼ぶ声を、その顔を思い出し、止まった思考が動き出す。
「信長様…た、すけて。いや!んんっ」
今度は男に唇を奪われ、なおは目を見開き涙を流す。
『いや!信長様以外に触れられるなんて!いや!」
なおは口内に入り込んだ男の舌を噛んだ。