第18章 ずっとそばに…
第三者目線
なおが外へ出てから暫くして
「後は頼む」
信長は短く伝えると廊下へと歩を進めた。
暫く歩くとお縁の柱に身体を預け、空を見上げるなおを見つけた。
信長はその姿に息をのむ。
『やはり天女の様だな…』
月明かりに照らされるなおに、信長は暫し見惚れていた。
酒で紅く染まった頬に涙が伝う。
『また…泣いておるのか』
「貴様は、満月が似合うな」
信長はそう声をかけ、なおに歩み寄ると、その華奢な身体を抱き締めた。
「貴様はよく泣く…。一人で泣くな」
「…ごめんなさい」
「謝らずともよい。泣くなら俺の腕の中で泣けと言っておるのだ」
『俺に甘えてほしい』
「…もう、甘えられません」
信長の心を読むかの様に、なおは言葉を紡ぐ。
「何故だ。俺は貴様を離すつもりはない」
「…信長様を、私は苦しめるだけの存在です。今なら…今なら、諦められるから…」
その言葉に、信長は覚悟を決めた。
『何故…自分の幸せを求めない…もう充分傷付いたのに、何故…その傷を増やそうとするのだ。』
信長は悲しみを感じるその反面
『俺の愛を受け入れぬと言うのなら、力尽くで奪い取る。何があろうと離さない…500年後にも戻さない。
決して傷つけぬとは言えん…だが、貴様に…俺の愛を全身で伝える』
憤りを感じていた。
「信長様?」
信長がなおを抱え歩き出すと、不安と疑問の混じった声色で信長の名を呼んだ。
それに答えず信長は一つの部屋の前に足を止めた。
私を抱えたまま襖を開け、中に入る。
信長は出来るだけ優しく、そっとなおを褥の上に降ろした。
『もう、止められぬ』
心の中で呟く。
葛藤がないわけではない。
これからの行為の行く末は、どうなるのか?
信長にすら想像する事は難しかった。
だが
『このまま…黙って手放す事は出来ぬ』
意を決してなおに告げた。
「今宵…貴様の心も身体も俺が奪う」