第1章 〜プロローグ〜
第三者目線
「何を!」
政宗と秀吉は慌てて馬を止めると、なおの元へと駆け寄った。
「「ツッ!」」
手足を弛緩させあちこちから血が滲んでいる。
頰には涙も見れる。
なのに、その顔には笑みが浮かんでいた。
その笑みに暫し固まる2人。
先に我に返ったのは、秀吉だった。
「政宗。行くぞ!早く。早く安土へ!」
「あっ…あぁ、分かった。」
その言葉に、意識を戻した政宗は、秀吉がなおを抱えるのを見て、馬に乗りなおを受け取ると
「2度と離さねぇーからな」
と呟き、漆黒の闇の中を今までにない速さで駆け出した。
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「家康!」
手の中の暖かさを感じながら、安土に着いた2人は、出迎えに来ていた1人の名前を叫ぶ。
「秀吉様、政宗様。お帰りなさいませ。一体どうなさったのですか?」
のんきに聞く三成を押しやり
「家康!なおが落馬した!身体の熱は奪われていない。見てやってくれ!」
家康と呼ばれた男は、眉間に皺を寄せた後
「分かりました。できるだけ揺らさない様に。俺の部屋へ。」
そう告げると、なおを抱えた政宗と共に駆け出す。
「なお様は一体!」
やっと事の重大さに気づいた三成に馬を頼むと
「御館様に報告してくる!」
そう言って秀吉は信長の居る天主に急いだ。