第13章 夏目くんと甘い王子※裏注意
あの日の夜から1週間程経った頃。私はもうあの乙女ゲームをやる時間なんてない程に仕事に追われていた。私だけではなく皆目の下にクマを作っている。関さんなんて穏やかな顔して何日徹夜してるのだろうか…
怜(最近春くんと夜一緒に寝てないなぁ…)
違う山を担当してる為、春くんと私は勤務時間が少しズレている。
怜「関さん、この資料確認し終わりましたので、捜査一課に提出してきますね」
関「ああ、ありがとう。でも提出は俺がやっておくから泉はそのまま帰っても大丈夫だよ」
怜「え?!私より働いてる関さんにそんなこと申し訳ないですよ!!」
関「そんな事ない、皆沢山働いてる。それに俺も提出するものがあるから問題ないよ」
青山「そうだ泉、早く夏目構ってやれ」
今大路「夏目くんもお疲れでしょうし、お二人でゆっくり休んでください」
怜「皆さん…」
目の前に山積みの仕事があるにも関わらず、私の先輩方は大丈夫だと言ってくれる。その優しさに思わず泣きそうになるのを堪えて、私は家に帰ることにした。
家に帰ると部屋は真っ暗で、寝室で春くんが寝ていた。リビングには無造作に置かれた鞄と資料があり、きっと春くんもものすごく疲れたのだろうと思った。
私はシャワーを浴びて春くんの寝ているベッドへ近づく。眼鏡を外した無防備な寝顔はどこか幼い。チラリと見える欠けた爪。
私はギュッと胸が苦しくなって、そっと春くんの手を包み込むように握る。
怜(春くん…)
春くんを仕事を理由に支えてあげられなかった自分が情けなくて、再び視界が霞む。春くんの手を強く握ったその時、私の目から雫が春くんの頬にポタリと落ちた。
それさえ気づかないほど、私は泣きじゃくっていて、突然聞こえた声に肩が震えた。
春「ちょっと、泣くなら俺が起きてる時にしてよね」
角張った指が私の溢れた涙をふいた。眠っていたはずの春くんが、疲れたようにふっと笑った。