第13章 夏目くんと甘い王子※裏注意
翌日。カーテンの隙間から漏れる光が私の重たい瞼を開けさせる。ふと、昨日ソファーにいたはずの自分がベッドにあることに気づいた。
怜「昨日…春くんが運んでくれたのかな…」
春くんに声をかけようと隣のベッドに目をやると、そこには整えられたシーツしかなかった。
まだぼんやりする頭で昨夜乙女ゲームの途中で寝てしまったことを思い出す。そこで途中の画面という所に引っかかった。
怜(きっと春くんがソファーで落ちてる私を見つけたってことは…携帯の画面も…)
脳裏に浮かぶのは甘い夜のストーリー画面。濃厚な交わりを交わす男女の絵。
怜「っ!!」
私は最悪の場合を想定しながら春くんを探す。ホテルを走り回るなんて生まれて初めてである。春くんと呼んでいると、いかにも面倒くさそうな返事が洗面台から聞こえた。
春「朝からバタバタしないでよ、騒がしい」
怜「あ、ごめ…おはよう」
春「んー」
眠そうに顔を洗い始める春くんを見ながら、私は先程のことをどのように話せばいいのか改めて考えていた。
怜(普通携帯の画面見た?なんて聞いたら明らかに怪しいよね…でもあのゲームの事を話すのも…だからと言って…)
春「…あのさ、人が顔洗う所見て楽しいの?」
怜「へっ?い、いや、別に見てない…訳じゃないかもだけど」
春「ふっ、何それ。ほら、怜も顔洗ったら?寝起きの顔ひどいから」
怜「ひ、ひどいって…ちょっと!」
春くんはクスクス笑いながらリビングに戻って行った。ふと鏡に映る自分の顔を見ると、彼氏に軽々と見せられるような顔ではなかったことを自覚した。
はぁ、と一息ついて顔を洗う。冷たい水のおかげでぼんやりしていた思考が回復した。
怜(春くん何も知らなそうだったし、気にしてる方が変だよね!よし!忘れよう!)
私はその事をとりあえず忘れることにした。いつか春くんに言われたとしても知らないふりをすれば何とかなる。
適当に納得した私は仕事がある春くんを見送りに行った。