第13章 夏目くんと甘い王子※裏注意
〘今夜は月明かりのもと、君を深く愛させて下さい…〙
怜「っんー!ヤバいこれ!!」
〘頭から爪先まで、全て僕のものです〙
怜「あ〜しんどい…」
深夜1時頃。私は独り言を呟きながらソファーに寝転がってスマホをいじる。
春くんとホテルで同居し始めてそれなりに経った。ホテル暮らしに慣れ始めている自分が少し恐ろしくもある。
昨日から春くんと由井さんは九州の方へ2泊3日の出張だ。珍しいと思ったのだが、その出張は薬品研究関係なので頭脳組の2人が最適であった。私もついて行きたい気持ちはあったが、足でまといになると思い春くん達を見送った。
その為私は今広い空間に1人、乙女ゲームに熱中していた。
怜「こんな事言われたらもう抱かれるしかない…」
ポツリと吐いた言葉にハッと気がつく。咄嗟に辺りを見回し誰もいないことを確認して落ち着いた。
怜(今ここに春くんがいたら大変なことになってた…)
私がオタクということを知った春くんはやっぱりね、と言っていた。恐らく私の身につけているものから推測したのだろう。
でも特に引いている訳でも無さそうだったので安心はしたが、私がこのような乙女ゲームにどハマりしていることは話していない。
怜「言ったらどうなるのかな…本気で嫌われたら嫌だし、でも妬いてくれたりするのかな…いや春くんに限ってそれはないか」
春くんのことを考えながらも、私はスマホ画面をタッチして甘い夜の描写を眺める。
〘…狂おしいほど愛してる…〙
スマホ画面は濃厚なシーンに突入し、吐息混じりのイケメンの声が私の耳を刺激する。
ふと、春くんとの夜を思い出してしまい、顔が火照るのが自分でも分かった。でも私は1つ、思ってしまったことがあった。
怜「春くん…愛してるとか…最中の時も言ってくれない」
愛されていないとは思ってないし、むしろ愛されてると感じることは多々あるのだが、言葉から愛を伝えてもらったことがほとんど無い。
我ながら贅沢な我儘だと思いながらも、何も愛を囁いてくれない春くんに不満を抱く。
怜「春くん…」
スマホを弄りながら眠気が襲ってきた私は、ブツブツと春くんに対して愚痴を零しながらソファーに沈んだ。