第12章 スタマイ小話
※付き合ってない設定です!
11月23日、世間一般で天皇誕生日、祝日として知られている。俺にもそのくらいの認識でしかない。自分の誕生日なんて何の特別でもないと思っていた。
その日部下達からそれなりのお祝いをされて、居酒屋から店を出た。そこでたまたま見つけた1匹のわんこ。
怜「あ!服部さん!探しましたよ!」
少し息を切らして俺の方へ駆け寄る。耳と尻尾がついててもいいくらいだ。
服部「マトリちゃん、どうしたの?そんなに慌てて」
怜「服部さんに渡したいものがあって…あの、お誕生日おめでとうございます!」
勢いよく突き出された手には丁寧にラッピングされた小包があった。
怜「あ、あの…もし迷惑だったらごめんなさい!」
服部「いんや、ありがとう、マトリちゃん」
俺が返事をするとパァっと花が咲いたように笑った。そんな彼女の顔も悪く無いと思った。俺はその場で小包を開けようとして動揺する彼女を無視して包装を解いた。そこにはシンプルなデザインのマグカップがあった。
怜「えっと、よく服部さんコーヒーを飲まれてるなぁと思って…もし良かったら使ってくれると嬉しいのですが…」
モジモジと恥ずかしそうに俯く彼女は、酒が入った俺にはいつもと少し違うように見えた。そして少し虐めたくなった。
服部「ま、使うには使うけど、条件があるかなぁ」
怜「条件…ですか?」
彼女は案の定何のことか分からないといった顔をした。俺はそんな彼女の腕を引いて、鼻先が触れる程近付いて呟いた。
服部「マトリちゃんが入れてくれたのなら…飲もうかな」
怜「…っ!」
一瞬で真っ赤になって、固まって動揺する彼女はとても面白い。本当にからかいがいがあるとはこういう事だろう。
服部「マトリちゃんが来るの、待ってるね〜」
俺はヒラヒラと手を振ってその場を去った。後ろを見なくたって彼女が今どうなってるかなんて想像しただけでも面白い。
服部(ほんと、マトリちゃんは飽きないねぇ)
貰ったマグカップを見つめ、彼女の色んな顔を思い出す。その時ふと自分の顔が少し緩んでいるのが分かった。
きっとこれも酒のせいだ、彼女が少し可愛く見えたことも…
11月23日、今年は少し特別な日になったかもしれない。