第12章 スタマイ小話
怜「神楽さん…これは…?」
神楽「素材が余ったから作っただけだって言ってるでしょ」
僕の目の前には目を見開いて驚く彼女がいた。今日も相変わらずひどいセンスの服で僕の所まで来た、まあ前よりマシにはなったけど。
神楽「ねぇ、人が物あげといて無反応とか君常識ないんじゃない?」
怜「え?くれるんですか?!」
神楽「そんなもの僕が持っててどうするの」
怜「そうですけど……」
ほんと、何処までも鈍い。僕は苛立ちながらそっぽを向く。
神楽(君が欲しいって言ってたくせに…)
───猫が好きなんです。この布でぬいぐるみとか作ったら可愛いんだろうなぁ────
前に君が言ったどうでもいい事なのに。そのどうでもいい事を僕は覚えててあげたのに、なんで無反応なわけ?僕の苛立ちは増す一方だ。
怜「もしかして…私が前に猫好きだって言ったこと覚えててくれたんですか?」
神楽「は?何言ってんの?たまたまだから」
自分の心中を読まれたように感じて、僕は反射的にいつものように毒を吐いてしまう。
怜「…ありがとうございます、神楽さん。最初は神楽さんが思いもよらないことを言ったので固まってしまったんですけど」
神楽「…君、さらっと失礼なこと言ったよね」
僕に対してそんな事言えるのは君だけだよ。そして僕にこんな事させるのも君だけだから、いい加減にしてほしいね、ほんと。
怜「すごく嬉しいです、神楽さんから素敵なものを貰えて…大切にしますね」
彼女はいつものアホみたいな顔を僕に見せてきた。こっちまでそのアホ顔が移りそうで嫌だけど。
神楽「…ふん、捨てたり無くしたりしたらまち針で刺すよ」
怜「そんな事しませんよ!!!」
僕の作った猫のぬいぐるみを君は抱き抱えて笑う。
神楽(…またアホみたいにヘラヘラして…別に嫌じゃないけど)
僕は自分の中で自分の本心を認めたくなかった。彼女のこの笑顔が見れてよかった、なんて───。