第3章 服部さんとお水
服部さんの呑気な声が上から聞こえて、今度こそ何か言い返そうとした時、ふわっと頭に何かが被せられた。
服部「それ使いんさい、流石にその格好で街歩くようなことはマトリちゃんでもしないでしょ?」
なんとなく軽く馬鹿にされたような気がしたけれどそれはさておき…自分の頭の上にはパーカージャケットが置かれていた。
暑くなり始めているこの頃、服部さんはいつものロングコートではなく、薄めのパーカージャケットを来ていた。
服部さんの香りがするその服を頭から取ると、服部さんは私から離れて帰ろうとしていた。
怜(え、これ借りていいってこと?でも服部さんのものを借りるって…いやでもこれがないと私帰れないし…)
服部「素直に受けとんなさいな、別に明日返してくれればいいから」
私がオロオロと服を持ったまま悩んでいると、服部さんが私のハンカチを持った手をフラフラと振りながらだるそうに帰っていった。
意地悪なのか優しいのか全く読めない服部さんに、私はお礼を言うのも忘れてその去る背中を見つめていた。
怜(本当…疲れた…)
はぁ、と大きなため息をついて、少し遠慮しながらもゆっくりと袖を通した。
すると服部さんの香りに包まれて、不思議と何となく安心したような気持ちになった。
怜(って、これじゃ変態みたいじゃない!)
はっ、と私は我に返り、その大きめのパーカージャケットを着て、私は課へ戻るのだった。