第3章 服部さんとお水
怜「服部さん…何でこんなこと」
服部「えー、だってマトリちゃんお水飲めなかったんでしょ?だから俺が手伝ってあげたんだけど」
ニコッと笑うその顔はまさしく魔王というべきか…。
怜「あの…どうして私の回した方の蛇口は出ないって分かったんですか?」
服部「だって水出てなかったでしょ?」
怜「そう…なんですけど」
服部「マトリちゃんが回した方壊れてるから、新しいのが反対側につけてあるんだよ」
怜「へ?そ、そうだったんですね…」
なんというか、自分の今までやっていた蛇口との戦いが恥ずかしく思えてきた。
怜「あの…服が濡れてしまったんですが…」
服部「あー本当だねぇ。今の時期涼しくていいんじゃないの?」
怜「誰のせいだとおも―――」
服部「マトリちゃんのせいだよね~」
有無を言わさないその目に私は黙ることしかで出来ない。濡れたせいではなく別のせいで背中に寒気が走る。
服部「マトリちゃんがちゃんと飲まないから俺の服も濡れちゃったよ」
ちらりと見るとシャツの腕の部分が水玉模様で濡れているのが見えた。目の前の私が全身びしょ濡れなのになぜそんな事が言えるのか、なんて服部さんに言えるわけもなく、ポケットからハンカチを取りだして服部さんに渡した。
怜「すみません、今タオル持ってなくて…」
服部「おや」
服部さんは少し驚いた顔をして、ハンカチを受け取った。
服部「マトリちゃんも女子力あったんだね~」
怜「い、一応女子なので…」
服部「そうだね~だったら」
いきなりぐいっと腕を引かれたかと思うと、服部さんの声が直接耳に響いた。
服部「マトリちゃんのその服装も、女子力?」
全身に甘い痺れが走った。鼓動が速くなるのをなんとか隠して言われたことを考えてみるが、何のことか分からずゆっくりと目を自分の濡れたシャツに落とすと…服に張り付いた自分の素肌と下着が模様のように見えていた。
怜「うああ!こ、これは…あ、あの…」
私は素早く胸元を隠した。でも頭が動揺しすぎて言葉を言うことができない。服部さんを前にして自分がこんな姿を晒していたことを思い出すと、全身の体温が一気に上がるのが分かった。
服部「ありゃ、ヒートオーバーしちゃいそうだねぇ」