第3章 服部さんとお水
怜「はぁ…疲れた」
暑い日差しの中、私はある事件に関連のある人物の監視をしていた。
朝から張り込んで今はもう昼過ぎになっていた。対象の人物もこの時間帯から夕方まで動きはない。私は多少の休憩を取ろうと思った。
ふと、近くに公園があることを思い出し、何となく行ってみることにした。
怜「なんか…落ち着くなぁ…」
公園のベンチは運がよく日陰だった。オマケに少し風も出てきて至福の休息を取っていた。
怜(喉乾いた…でも自販機まで歩くのやだな)
元々インドア派なのであまり動きたくない、とゆうか動けない。どうしようかと悩んでいると、すぐ横に公園特有の飲み水の場所があった。
怜(あの水昔よく飲んだなぁ~水だけど冷たくてこれがまたいいんだよね)
昔のことを懐かしみながら、その水道まで数十歩歩いた。
さて水を飲もうと蛇口を捻ってみると…なぜか水が出てこない。もう水を飲むスタンバイは出来ているのに。
怜「嘘でしょ…」
唯一の自分のオアシスがなくなってしまった。無駄だとは思いながら何回も捻るが一向に出てこない。
そんなことに集中していて後ろから来る影には全く気付かずに、私は奮闘していた。すると―――
服部「マトリちゃん、そっちじゃなくて、こっち」
後ろから伸びた手が反対側の蛇口を捻る。私のことをそう呼ぶのはあの人しかいなかった。そしてその名前を口にしようとした時―――
怜「はっ―――ぶっ!ちょっ!!」
スタンバイしていた私の顔面に容赦なく吹き出した水。勢いがありすぎて痛いくらいだ。
怜「ちょ…ど、いてくだ…んぅ!」
服部「どうしたの?お水飲みたいんじゃないの?」
この悲劇を後ろで楽しんでいる犯人、服部さんは私のすぐ後ろで意地悪な笑みを浮かべている。逃げようとしても両手で閉じ込められているのだ。
怜(え?!何なの!!こんなんで水飲めないわ!ちょ、もう服までビショビショなんだけど!!)
服部「たくさん飲めた?」
やっとスルッと服部さんの腕が取れて、私はぷはっと息を吐いて服部さんから距離を取る。