第3章 ep3 遭遇
「岩ちゃん」
次の日の練習後、自主練も終わり、体育館の隅でシューズの紐を解いている岩泉に、ドリンクボトルを片手に持った及川が声をかけた。
「ん?」
「今日もりこに話しかけたら素っ気なくされた〜!」
泣きつくように岩泉のTシャツの袖を掴む。
「またあいつの話かよ」
やれやれとでも言うように岩泉は肩を竦めた。
「ぐずん・・・・・・だって、今朝おはようって挨拶しに教室行ったら、俺の顔見た途端出ていったり、帰りも俺が門まで送ろうか?って言っても断られたし」
「いや、それはりこじゃなくても同じ反応するだろ。なんだよ門まで送るって」
「うっそ、そんなこと言わないでよ!」
ガビンッと言う効果音が聞こえてきそうな声色で話す及川。
(まぁ、及川がりこに絡みに行きたいって事はわかるが・・・)
「及川、残念な知らせだが言う。あいつ、クラスの他の男子には普通に話してるぞ、勿論女子にも」
「岩ちゃんには?」
「俺も、何故か及川と同じ扱いを受けてる。素っ気ねぇぞ」
「マジで?!俺にだけじゃないのか!でも、なんで昔馴染みの俺達の事・・・」
あんなに避けているんだろうか・・・
「俺にも分かんねぇよ。ただ、避けられてる以上こっちから無闇に絡みに行っても、逆効果だとは思うがな」
「うっ・・・」
「なるべく、あいつに不用意に声かけに行かない方がいいんじゃねぇのか?」
岩泉の言うことは頭では理解できるが・・・
「・・・わかった」
逃げられれば逃げられるほど、
(その背中を追いたくなるんだよね・・・・・・)
もう一度あの瞳に、自分を映してほしいと・・・・・・