第3章 ep3 遭遇
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「じゃあ岩ちゃん、おっつかれ〜い」
「おぅ、また明日な。帰り寄り道すんじゃねぇぞ〜」
「岩ちゃんは僕のお母さんですか?!」
及川と岩泉の家は、駅一つ分の距離がある。よってそれぞれの最寄り駅も一つ違う。車内の席で浅く座る岩泉に手を振り、及川は下車する。
高校からはさほど遠くはないが、練習が終わる時間によって自宅に帰る時間はそれなりに遅くなる。しかし今日は確認のためのチーム練習をメインにしていたため、割と帰る時間が早かった。
(そうだ、バリボー出ってるっかな〜)
駅のすぐ近くの本屋がまだ営業しているのを確認し、及川は足を進める。
本屋独特の雰囲気と匂いが、及川は好きだ。肺いっぱいに吸い込みながらお目当てのバレー雑誌を探し歩く。
すると目の前のスポーツ雑誌コーナーに、見知った人物を見つけた。
「りこ・・・?」
今、及川の悩み、気がかっている事の大半を占める少女が、あろう事か及川の探し求めていたバレー雑誌を片手に熟読していたのだった。
「あ。」
不意に話しかけられ、思考が働く間もなくりこは及川を見つめた。
逃げる時間を与えないように、及川は素早く彼女の隣に歩み寄る。
「あ・・・」
「ふ〜ん?それ、去年のワールドカップのやつだね」
りこの開いていたページは丁度、テレビで見るような選手たちのスパイクするものや、渾身のレシーブのは写真が載っていた。
「う、うん・・・」
ぎこちなく、何故か居心地悪そうにりこは目をそらす。
そんな彼女の様子を伺うように及川は笑みを浮かべる。
「そういえば、その試合のアジア予選、東京でやった時、俺見に行ったよ」
「ほんと?!」
ガバッと顔を上げ、間髪入れずにりこが反応した。
その様子に少し驚きつつも、及川は頷いた。
「去年丁度その時期に夏合宿を東京でやっててさ、監督のつてで、見に行かせて貰ったんだけど、ほんと、見てて楽しかったよ」
「そうだよね!生で見るとやっぱり緊張感とかが違うよね!」
先程とは打って変わって、キラキラした表情を浮かべるりこ。