第20章 ep20 我慢
「完全に嫉妬してんじゃねぇか」
痛い所を突かれて反論できない。
及川も、りこと付き合っているとはいえ、部内でそんな雰囲気を醸し出しても他のチームメイトに気を使わせてしまうと思い、なるべく他の生徒と同じような距離感を保って接している。
りこは相変わらず、と言うか恋愛に対しては意外とあっさりしているのか、及川との関係に不満はなさそうで、むしろあっさりしすぎて本当に付き合っているのか?と疑いたくなる時がある。
そんなりこに対して、他の部員達はぐいぐいと距離を縮めようとしていた。
渡や今年入部した金田一は、純粋にプレーの面で自主練の球出しを頼んだりしているが、矢巾や他の連中は、憧れの女子マネージャーに浮かれて、学校でも教室移動で近くを通ればりこに挨拶しに来る、とりこと同じクラスになったラッキーボーイ花巻が言っていた。
最近はクールな国見も、りこがボトルの山を抱えていたら持ってあげたりしている。
「ほんっと、どいつもこいつも・・・俺だって我慢の限界があるっつの」
「いやお前最近プレーに出てっから。殺人サーブの威力増してこえーよ」
制服に着替え、パタンとロッカーを閉める。
「分かっちゃいると思うが、これはチームにとって結果オーライだろ。現に渡も金田一もほかの連中も、自主練の幅が広がって上達してきてる。まだまだ高校バレーに慣れてねぇ1年も、りこが外からフォローしてやってるから徐々に動きもよくなってきてるしな」
「・・・・・・・・・うん」
とてもいい循環だから、それに文句は一つも言えないのだが・・・
「何か他に言いたげだな、クソ川」
「まだクソな台詞言ってないからクソ川って呼ばないで」
「なんだよ・・・・・・」
バレーどうのこうのは置いておいて、
これは、#NAME#と及川の話である・・・。
「俺、まだ、りことシてない!」
「やっぱクソ川じゃねーか」