第18章 ep18 景色
2人の姿が、自分とチームメイトの姿と重なる。
自分もこんな風にブロックに捕まると畜生、と思っていた。そして同級生のセッターは今のトスはこうした方がいいか聞いてくれて、それで2人で正解を探して何度も何度も練習した・・・
(あ、次は決めた・・・・・・)
そして上手く行けば、笑顔でハイタッチして・・・
他のみんなも、ナイス、と声をかけてくれて・・・
次はこうしよう、あぁしよう、と話し合って、
また夢に向かって練習していく。
今まで当たり前にあったもの、
失って初めて大切なものだと気づいたもの、
体育館、チームメイト、夢に向かって全力でボールを追いかけるひたむきさ、壁にぶつかっても乗り越えようとする前向きさ、バレーを楽しむ心、喜びの笑顔・・・・・・
それが、ここには、このチームにはあるとりこは思った。
このチームには、りこが失ったものが沢山あった・・・・・・
あぁ、また涙が溢れてくるーーー・・・
(徹くん、一ちゃん・・・・・・)
幼かった頃のふたりは、懸命に夢を追いかけてきて、
ここに、たどり着いたんだねーーー・・・
ーーー・・・
「遅くまで、ごめんね、寒かった?」
練習が終わり、ギャラリーに及川が上がってきた。
「ううん、下級生のセッターの子が、ヒーターも用意してくれたし、練習見てたらあっという間に終わっちゃった」
「げ、矢巾のやついつの間にここ来てたのっ」
顔を歪ませる及川。
くすりと笑って及川を見上げる。
彼は自主練をしている下級生のセッターを睨んでいたが、やがてそのプレー自体を観察するような目の色に変わっていた。
(バレー馬鹿)
バレーに貪欲
上を目指したい、そう思っているのがこのチームで一番強く、それが上手くチームに浸透している。
「良いチームだね・・・」
この他に、言葉がなかった。
それぞれが足りない所を理解して、そして直そうと考えて動いている。
全ては勝つために・・・