第18章 ep18 景色
抱きしめたりこの体は震えて、今にも壊れてしまいそうだった。
聞いた。彼女から全てを。
そんな及川が初めに発したのは、
「ごめんね・・・」
だった。
りこは涙に濡れた目を見開いた。
「ど、して徹くんがっ、謝るの」
ひっくひっくとしゃくり上げてりこは問う。
そんな彼女の頬を両手で多い、目線を合わせる及川。
彼女の瞳から涙は止まることを知らなかった。
「何も知らないで、しつこく話しかけたり、バレーやらないの?なんて聞いたり・・・・・・・・・一番苦しい時に、傍にいてあげられなくて」
りこが人生で一番辛かった時、自分は何も知らずにバレーに打ち込み、学校では女子に囲まれてヘラヘラしていた・・・
再会した時、笑顔がみたいから、と言って傷も癒えていない彼女にしつこくアプローチをかけて、
本当にデリカシーの無い行動を恥じた。
「徹くんは何も悪くない・・・・・・私が、私が全部悪いの・・・バレーももう2度と関わらない、だから離して、徹くんに優しくしてもらう権利なんて私に無・・・・・・んっ!!」
その瞬間、りこの唇は、及川のそれに塞がれた・・・
「ん、んんっ!」
離れようと及川の胸を押し返すが、逆にその手を絡め取られ、床に縺れるように押し倒される。
床に手を縫い止められ、身動きが取れない。
顔を背けて及川から逃れようとするが、片腕で頭を完全に固定されて、それを許されない。
キスは角度を変えて、口内に及川の舌が入ってくる。
歯列をなぞり、上顎を撫で、舌を絡め取られる。
突然で、濃厚な口付けに、りこは徐々に抵抗する気力を失い彼にされるがままになっていった。
強引な彼の口付けは、りこの抵抗が収まるのがわかると、優しく、まるで愛しいものに触れるように丁寧なものに変わった。
これ以上は呼吸が苦しい、と思う直前に、名残惜しそうに唇が離れ、お互いの吐息が触れるくらいの距離で見つめ合う。
「・・・・・・りこ」
さらりと、りこの乱れた髪の毛を優しく撫でる。
低く、でも甘く響く及川の声。
「バレーに関わらないって言葉言うの・・・・・、俺達の練習見てからにして」