第2章 ep2 疑問
キーンコーンカーンコーン・・・
ホームルーム終了の鐘が鳴る。
「じゃあ明日から授業始めるから、教科書忘れないようになー」
担任の言葉を合図に、皆生徒は帰路につく。及川は勿論この後部活があるため、監督に体育館の鍵を借りに職員室へ向かった。
「お。あの子ってさー、さっき式の時後ろで座ってた子じゃね?」
「ホントだ。何組になったんだろ」
生徒たちの声に目線を上げると、丁度職員室から出てくるりこの姿が見えた。
「お前話しかけて来いよ〜」
「ちょ、待てよ心の準備とかあるだろっ」
彼女の事でじゃれ合う生徒たちを足早に過ぎて、及川はずんずんとりこに向かって歩いていく。
「りこ!」
「・・・・・・え・・・?」
突然呼ばれた名に、少女は驚いて振り向く。そして及川を視界に捉えると大きな瞳をもっと大きく、丸くした。
「嘘・・・・・・」
「久しぶり、元気だった?俺のこと、覚えてる、よね?」
及川が彼女の近くに経つと、必然的に彼女は及川を見上げる。
(こんなに小さかったっけ・・・?)
五年前に見た彼女は、自分よりも少し大きかった気がする。あれから及川はぐっと身長も伸びたから当たり前だが、近くで見下ろすとより小さく見えた。
(近くで見ると余計綺麗だな・・・)
大きな黒い瞳は真っ直ぐに自分を映し、及川はそれに吸い込まれそうな感覚に陥った。
「ここ、の高校だったんだ・・・」
小さな唇から紡がれる言葉が心地よい。
「うん、そうだよ。俺、今ここのバレー部のキャプテンやってるんだっ」
「そう、バレー部の・・・・・・」
りこはそう呟くと、何か悲しそうに目を伏せた。
及川はそれを疑問に思い、りこの顔を覗き込もうとした・・・
しかし。
「凄いね、それじゃ、がんばって、ね・・・」
りこはぎこちない笑みを残して及川から逃げるようにその横を過ぎ去って行った・・・
「え・・・・・・?」
一瞬遅れて彼女を振り向くと、丁度階段を早々に降りる所だった・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・
(あっれえぇぇぇぇ!?)