第2章 ep2 疑問
「岩ちゃん、あの子ジュニア時代隣のコートでバレーしてたりこだよね!?」
「あぁ、だと思う。なんだってまた俺らの高校にきたんだろな」
式中も、及川はりこの事で頭がいっぱいだった。もう何年も顔を合わせていなかった少女と、久しぶりの再会、しかもあんなに美人になっていたなんて胸が踊らないわけがない。
彼女は式中、出入り口の隅で座っていたが、岩泉の担任の教師が傍についていたことを考えると、どうやらクラスは岩泉のクラスなのだろう。
「でもさ、もう何年も会ってなかったからあんま覚えてないけど、なんか昔と雰囲気違くなかったか?」
教室に戻る最中、岩泉は首を傾げた。
「んー、確かにね。綺麗だけど、もっとこう、ぱぁっとした、いつも笑顔だったと思うよ。俺みたいに!」
「お前は本当一言余計だわ」
りこは、バレーを通して仲良くなった。確か始めた時期も同じで、小学校は違うが、練習で毎回会えるのが、及川の一つの楽しみだった。
バレーに打ち込む姿は真剣で、かつ楽しそうで、笑顔が絶えなく、
はたまた練習後は同じチームメイトと仲良く遊んでいるような活発な子だった。及川や岩泉とも、よく遊び、この角度なら上手くボールが上がるとか、スパイクが打ち込みやすいとか、バレーの話をしょっちゅうしていた。
そんなバレーにひたむきな姿勢と、恵まれた身長もあってか、県外の中学校からスカウトされていた。及川でも知っている中学だった。関西にある中高一貫で、バレーのエリートだけが入れる強豪だった。
上手い選手たちがたくさんいる場所でバレーができる事への期待。それを抱えているりこが及川は羨ましく、そして誇りだった・・・
(りこ、本当に綺麗だったな、何なのあの、"女"って感じ・・・)
それは他の男子生徒たちが釘付けになる訳だ、と納得しながら自身の席につく。
(俺の事、覚えてるかな〜)
久しぶりに、楽しいことを見つけた子供のように及川は胸を踊らせながら、ホームルームを受けることにした。