第17章 ep17 空虚
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「だから私は、もうバレーはしないと決めたの。自分自身の戒めとして・・・夢から逃げた人間が、夢を追いかける資格なんて、ない・・・」
及川は何も言わずに、目の前のりこの壮絶な話を聞いていた。
「ここに転校してきたのは、ただ自分のこれからの事を考えて高校は卒業しなければいけないと思ったから、両親に頼んで入学させて貰ったの。徹くんや一ちゃんがいたのは、本当に知らなかった」
そう、本当に知らなかった・・・
だから再会した時、決意が揺らいでしまわないか怖かった・・・
まだバレーを続けていると知って、
周りからも頑張っていると聞いて、
私もそっちの世界に戻りたいと思ってしまうのが怖くて。
そして、今でも努力を惜しまない彼らに、
努力する事から逃げてしまった私を知られるのが怖くて、
嫌われるのが怖くて・・・
何度も何度も避けたし、拒絶した。
「本屋さんで徹くんとバレーの話をした時、自分がまだバレーが好きだってこと、遠ざけていたのに好きなのは変わっていないことに気づいたの。だから、これ以上その気持ちが大きくなってしまうのが怖くて、徹くんに酷いことを言った・・・」
他の生徒に絡まれているところを助けてくれたのに、あの時拒絶した・・・
「それをきっかけに、私は他の女子の生徒から目をつけられて、呼び出しされたんだけど、一ちゃんが助けてくれて、その時に、私の事、全部話した。そしたら、一ちゃんは言ってくれたの・・・及川は、絶対そんな事思わないって」
(岩ちゃんが・・・)
そんな事があったなんて今日まで、知らなかった。
そんな目まぐるしく壮絶な事が、この少女に降り掛かっていたなんて。
その細い体で、悲しみも苦しみも・・・全て独りで受け止めて・・・
彼女の笑わなくなった理由を、及川は初めて知った・・・