第17章 ep17 空虚
その当時の私の幸せは、バレーで得られる歓びから、人に愛される喜びだとすり替えていた。
けれど幸せだと思っていたのは本当につかの間。
妊娠の報告をした途端、彼に別れを告げられた。
"俺の子やない"
1番大好きだった人からの、拒絶を聞いて・・・
もう何も、誰も信じられなくて、
自分の愚かさを悔やまずにはいられなかった。
突然放り出された、高校生活とは別の、大人の世界。
世間はなんて言うだろう、バレーに打ち込むことを忘れて男にうつつを抜かした挙句、妊娠をしてしまった愚かな私を。
ーーー・・・
両親に電話をして、来てもらい、全てを話した。
泣きながら話す私に、体を冷やすからと言って上着をかけてくれたお父さん。黙って私を抱きしめ、頭を撫でてくれたお母さん。
お母さんは普段ずっと喋っているのに、こんなに無口な姿をあの時初めて見た。
家族の温もりだけが、安堵をくれた。
そして、私は家庭の事情という括りで、チームを、高校を去ることにした。
誰にも別れを告げず、お世話になった監督にすら、真実は告げなかった。
ただ、しきりに、
"すみませんでした。今までお世話になりました"と、
謝り続けた・・・・・・・・・
ーーー・・・
帰ってきた宮城の地は、もう肌寒く、寂しい秋の景色をしていた。
少し、体を安静にしなさい、と実家に帰ると母は言ってくれた。
私の頬を包んで、大丈夫よ、と言ってくれた母の温もり、偉大さが染みた。
その時の私の中には、まだ彼の存在が強くあり、
現実が受け入れられなかった。
思い出すのは彼の笑顔、自分を呼ぶ声、抱きしめてくれた温もり、
キスも、セックスも、好きも、愛してるも・・・
全部全部彼が初めてだった
あんなに優しかったのに、あんなに好きだと言ってくれたのに・・・
あんなに愛していたのに・・・・・・・・
今隣には彼はいない。どうして・・・
これからひとりで、この子を育てていく・・・・・・
その不安が伝わってしまったのか・・・・・・
お腹の赤ちゃんは、亡くなっていた