第16章 ep16 堕落
試合は私は出ずに敗れ、宿泊先のホテルへと戻った。
移動中のバスの中、みんなは真剣な表情で今日の試合の反省点を考えていたけれど、私は1人、気が気ではなかった。
部屋に着くと私はカレンダーを穴が開くまで見入った。
(いつから、・・・前の生理はいつだった!?)
確かめると、もう既に予定日からは4週は過ぎてしまっている事に気づいた。
体調を崩した私を心配してマネージャーが声を掛けに、ホテルの部屋まで来てくれたがその時の私は何も気づかずに体を震わせていた。
どうしよう、どうしよう、どうしよう!
とにかく私は、その日は不安のまま横になった。
寝付けなかった。
もし、もしもの事があれば、私は・・・
一体どうすれば良いのだろうかーーー・・・
寮に戻り、その日の夜、私は寮を抜け出し、近くのドラッグストアへ飛び込んだ。
探し求めていたのは、妊娠検査薬で、無我夢中で置いている場所を探した。
部屋で買った妊娠検査薬の箱を震える手で開けて、説明書を読む。
誰にも気づかれないようにトイレに行き、説明書通りに検査を行う。
時間を置いている間、心がどうにかなってしまいそうだった。
もしも妊娠していたら?
学校は?
バレーは?
あの人とは・・・?
ーーー・・・
結果は陽性、妊娠していた。
突きつけられた現実。
何も考えられなくて、枕に顔をうずめて声を殺して泣いた。
助けて、ごめんなさい、助けて・・・
このお腹の中に、新しい命があること、
とても素晴らしい奇跡のはずなのに・・・
当時の私には、受け入れられなかった・・・
ーーー・・・
「はぁ?ちょっと、何いってんの?」
妊娠したことを、震える体を抑えて、彼に告げると、今までの彼とは別人のような顔をした。
「え・・・・・・だから、赤ちゃんが、できたの・・・」
突然顔の変わった彼に、戸惑う私。
お腹にそっと手を当ててみるが、何の音もしない。
お腹も膨らんでないし、本当にいるのかどうかも分からなかった。