第15章 ep15 過去
その日初めて私はキスをした。
ドキドキして、優しくしてもらえて、
誰かを想い、誰かに想われる事がこんなに幸せなことだと知った・・・。
それから、私は度々寮を抜け出して彼と会った。
会う度に好きな気持ちが増して、好きと言う事で、溜まった愛情を相手に注いでいるような気がしていた。
はじめの方にあったチームへの罪悪感など、全くなくて、ただ本能の赴くままに、私は動いていた。
"俺も好きやで、めっちゃ好き・・・"
彼もつられるように、何度も何度も好きと言ってくれた。
"愛してる。結婚するなら、りこみたいな女がいい・・・"
その甘い言葉を、私は全身で受け止め幸せに換算した。
幸せ・・・
その時の私は彼のくれる何もかもが初めてづくしの事で、毎日が幸せだった。
付き合って二週間経った時、私は彼の家で処女を捧げた。
痛くて、苦しかったが、彼が気持ちよさそうに私の名を呼んで腰を振るので、それが愛おしくてたまらなかった。
やっと彼のものになれたと、実感した。
初めてのセックスのあとは、私はいつものように寮へ戻ったが、さっきまであった彼の熱い体が恋しくて少し切なかった。
正直に言うと、バレーで勝つことよりも幸せな事が、目の前にあると私はその頃、思っていた・・・・・・
ーーー・・・
平日は学校で授業を受け、終われば4時間練習、ご飯、お風呂、洗濯をして就寝、みんなが寝静まった頃に寮を抜け出し、彼の家で体を重ねる。
大好きな彼に求められることが嬉しくて、呼び出されればすぐに会いに行った。
そんな事が週に2回から、3回、5回、気づけば毎日のように行っていると、多少体が疲れてきた。
そんな時は授業中に眠って体力を回復したり、
練習でも10本サーブを指定した範囲に入れなければいけない時に隠して8本で終わって体力を温存したり、
バレー日誌の書く量も、今までの半分になっていった。
全ては彼との時間のために・・・
私の優先順位は、バレーから彼になり、
バレーへの怠りが目に見えていた。