第15章 ep15 過去
まだ、中学生のうちから寮生活をする事になり、離れ離れになる両親はとても心配してくれていたけれど、寮母さんがいて、何よりチームメイトが大勢いて、寂しいと思うことはなかった。
上下関係がなく、みんながチームのことをファミリーと呼ぶくらい仲の良かった。みんな身長が高く、私より技術が優れている人間ばかりだった。でも、そんな人でも、練習中は監督から怒られて、罵声を浴びせられたりしていた。
最初はみんなの前で怒られるのが嫌だな、怖いな、恥ずかしいなと思っていたが、いざ自分が怒られると監督は自分で考えてプレーさせるために、もっと良い選手にするために、自分を思って叱ってくれているんだと感じた。
そう思ったら、恵まれた環境でバレーが出来ることがとても有難かった。
2年になれば、私はエースとしてコートに立っていた。来る日も来る日もボールを打ち込んで、手がぱんぱんに浮腫むくらいに打ち続けて、肩を痛めたりしたことも、監督から叱られ続けてスランプになった事もあったけど、それでもここに立ち続けていたくて、あの当時は必死だった。
そして気づけば中学最後の試合・・・
私たちは全国大会で優勝した。
あの時もコートに立っていた。
夏の暑い東京体育館で、汗だくで、息苦しくて
何度も何度もトスを呼んだ、ボールを打ち込んだ。
最高に楽しいと感じた。
1点1点、後半になるに連れて、決めた瞬間に抱き合う力が強くなって、みんなが無我夢中だった。
最後の1点、決めたのは、私だった。
みんなが、必死にブロックでワンタッチを取り、
滑り込んで拾い、
もつれかける足を動かしトスを上げて、
私に決めさせてくれた。
そうして掴んだ優勝の景色、私は忘れられない。
誰もが涙し抱き合い、褒め称え合い、安堵の息をつき、コートに倒れ込む。
誰もが笑顔であった・・・
人生で、こんなに幸せなことは他にないと、思った。
それからエスカレーター式で姉妹校へ進学し、バレー中心の日々が続いた。
完全に身長の成長が止まり、後はもっともっと技術を磨くために、他の大きな選手に負けないように練習する毎日だった・・・