第15章 ep15 過去
《りこ side》
物心ついた時から、ボールを持っていた。
母が昔バレーをやっていたから。
人の思いと思いを繋ぐことを、バレーボールを通して学んで欲しかったからだと、後から母に聞いた。
入部対象年齢に達した為、念願のバレーチームに入部した。
他の子たちより身長もあった私に、先生は沢山ボールを打たせてくれた。ただただ楽しくて打っていると、気づけば他の人たちも喜んでくれた。
りこちゃんが決めてくれるから点数が入って勝てる!勝つと嬉しい!そう言ってくれるから、私は夢中でスパイクを打っていた。
そんな風にバレーを純粋に頑張っていた私のチームは、県内では負けないくらい、強くなっていった。
強くなるにつれ、先生は練習試合や合宿に沢山連れて行ってくれた。そこで、初めて関西の中学校へ合宿に行った時に、私は恩師と出会った。
その人はそこの中学校の姉妹高校の女子バレー部の監督をしていて、後から母に調べて貰ったら、その学校はバレーの名門、その人は名監督と呼ばれる人だった。
そんな恩師が練習試合での私のプレーを見て、
"あいつ、ええなぁ・・・"
そう言ってくれた、らしい。
その合宿を終えると、先生が私にこう聞いてきた。
"りこ・・・中学生になったら、もっと強い所で、バレーをしてみないか?"
恩師が、中学校の監督に口を聞いてくれ、私をスカウトしてくれたのだ。
何も分からなかった私だが、自分より上手な選手と、大好きなバレーができる、という事は断る理由を皆無にした。
私は胸を踊らせて、仲の良かった隣の男子チームの同い年の2人に県外の学校へ行くことを告げた。
その時は、わくわくとドキドキで胸がいっぱいだったと、今でも思い出せる・・・