第14章 ep14 孵化
(りこ・・・どこにいるんだよ・・・・・・)
及川は再びりこを探すことにした、すると・・・
「及川」
後ろから呼び止める幼馴染みの声。
振り返ると、岩泉がカバンを片手に立っていた。
「多分、りこは、体育館に戻った、と思う」
「え・・・・・・・・・?」
「なんでわかんのかって、顔だな。理由は簡単、あいつは、まだバレーが好きだからだ」
ーーー・・・
"1年はもう1限ホームルームが残ってるから部活まで時間はある。他の同期は俺が部室で相手しとくから、りこの所にいってやれ"
岩泉が作ってくれた、りこと向き合うチャンス。
"あいつを救えんのは、お前だけだ"
幼馴染みの後押しに
及川は駆け出していた。
全速力で、息を切らして。
ただりこの姿を見つけるために、
りこの手を掴むために・・・
ガララララ・・・
重い扉を開け、先程まで激戦の場となっていた体育館に入る。
これからバレー部が練習するため、コートはネットを緩めただけになっている。
電気も消された体育館のバレーコートの真ん中で、彼女は膝を抱えて座っていた。
「りこ・・・・・っ」
息を切らして、及川は彼女の名を呼ぶ。
ゆっくりとりこは顔をあげる・・・
目には、頬には、涙の通った線をいくつもつけて、及川を向いた。
「"徹くん"・・・」
これ以上、隠せない・・・抑えきれない・・・
もう、限界だった・・・
「私ね・・・・・・」
"家族を、自分を、先生を、チームメイトを、・・・・バレーを・・・・
裏切ったの"