第14章 ep14 孵化
ラリーが長くなるに連れて、心が体が純粋にボールを追いかける。
落としたくない、決めたい・・・!
たかがバレー、たかが部活、そう言う人もいるだろう。
だが、その"たかが"と思っているものを本気でやることで、得られる仲間や涙、悔しさ、感動、歓びの景色がある。
りこは、及川がそれを知っているからこそ、強く惹かれるのではないかと思う。
私達は、頑張っていた場所は違っていたけれど、
同じように、何にも変え難い景色を見てきたんだと思う。
もう一度、その景色が、見たい。
でも・・・・・・っ
ダダーン!
それはスローモーションのように、トスが上がった先の景色が見えた。相手のレシーバーの位置、ボールの起動、自分の打てる体制、全てが理解でき、りこは、一番得意なストレートへ打ち込んだ・・・
27-25
多分、今日の試合で、1番いいスパイクを決めて、
りこたちのクラスは優勝したーーー・・・
その後歓声が湧き上がる。りこを活躍を讃えて多くの生徒達がりこに群がったが、何故かりこは試合直後に、体育館から走り去ってしまった。
及川は彼女を探したが、人混みに紛れて見失ってしまった。
(りこ・・・・・・?)
最後の1本、決めた時のりこの顔は、何故か悲しみを押し殺したかのような顔つきをしていた。
それが気にかかって、すぐにでも彼女を追いかけたいのに表彰式に追われたり、そのままホームルームになってしまったりして、足止めを食らってしまった。
「じゃ、明日で学校終わりだから机の中空にしてけよー、以上」
担任の言葉を皮切りに、生徒達は次々と下校していく。
「今日隣のクラスのりこちゃんやばかったよねー、マジかっこよかったわ」
「うんうん、うちらより全然上手かったし!ファンになるわー」
ちらほらとりこの話題が出るが他の生徒達は知らない。
りこはきっと今、何かを抱え込んでいる。