第12章 ep12 願望
夢中になりすぎて、触れるのが怖くなる。
掴めば羽のように手元をすり抜けそうで、
触れるのが、自分なんかが触れていい存在なのか、わからなくなる。
「お馬鹿・・・」
「え?」
及川はベッドに横たわるりこの隣のスペースにぼふっと顔をうずめた。
「りこのお馬鹿ーっ!!もう、もう、もう!」
スリスリと頬をすり合わせ、耐えきれないもどかしいような衝動をやり過ごす。
(今すぐにでも言って、自分のものにしたい・・・)
しかし、それはまだできないと、及川は思っている。
りこが、自身のことを話してくれるまで、先へ進むのは待とうと決めていた。
自身のことを話してくれるという事は、自分を信用してくれているという事だと及川は思っている。
大切な人の、大切な存在でありたいと願うから、
今暫く、及川はその時を待つことにしている・・・。
ーーー・・・
「及川くん、そう言えば・・・」
ベッドに二人並んで同じように天井を見上げながら、りこは尋ねた。
「県大会・・・どうだった?」
繋いだ手に、力がこもる。
「準決勝で白鳥沢と当たって、ストレートで負けたよ。・・・ほんと、ウシワカむかつく」
ぎりぎりと歯ぎしりしそうなくらいに歯を食いしばる。
及川が言っていた。中学から、どれだけ、どれだけ練習して挑んでも勝てない学校があると。
白鳥沢学園。
一体どんなチームなんだろう、気になりはしたが、すぐ隣で眉間にシワを寄せる及川を、りこは応援したくなる。
(いいな・・・純粋に悔しがって、何がダメだったのか、自分の中で問い詰めて、答えを見つける為に練習して・・・)
りこは及川が羨ましいと感じた。
だがーーー・・・
"私、バレー部を名乗る資格無いです
本当にごめんなさい
今までお世話になりました・・・"
「・・・・・・・・・・・・・・・」
りこは及川に気づかれないように、
きつく、血が滲むほどに唇を噛んだーーー・・・