第12章 ep12 願望
(見てみたかったな・・・中高のバレーしてるりこ・・・)
自分の知らない地で、自分よりも背の高い、パワーもスピードもある人たちがひしめき合う中で、彼女はどんなプレーで、あの笑顔を咲かせていたのだろうか。どんな事で悔しがったり、泣いたりしていたのだろうか。
全部知りたい、りこの事なら、全部、ぜんぶ・・・
こんなことを言えば嫌がられるだろうか・・・
「はい、徹ちゃん、お待たせーっ」
そこに丁度、ジュースとお菓子を持ってきたりこの母親がやってきた。
「すみません、気遣って頂いて」
「いいのいいの!徹ちゃんゆっくりしていってね?おばさん下にいるから何かあれば言ってね!りこもフルーツ食べなさいね、ビタミン取って!」
小さな丸い机に、カップとお菓子を置いて、りこの母親は去っていった。
「相変わらず、元気なお母さんだよね」
「ほんとごめんね、嵐のように騒がしくて・・・」
ベッドに腰掛け、カップに注がれた暖かいココアを両手で持ちりこはゆっくりとそれを口にする。
「りこも修学旅行の時、あんな風にイキイキしてたよ」
「えっ!うそ?」
ばっと顔を上げて、そんなことないよ〜と恥ずかしそうに眉をひそめる。
「はは、うーそ。でも、珍しくキャラクターに抱きついたりして、可愛かったよ」
隣に腰を下ろし、ぽんぽんと頭を撫でる。
「もう・・・・・・」
髪の毛を触り、赤く色づいた頬を隠すようにする仕草が、及川の心をくすぐる。
(可愛いなぁ・・・)
「体調良くなってきてよかった。こないだは会いに来たけど、熱が上がる一方で会えなかったから」
「うん、あの時はほんと、しんどかった。ごめんね、ありがとう、2回も会いに来てくれて。明日には学校いけると思うから」
無理しなくていいよ、と言ってりこの髪を無造作に梳く。
さらさらして、絹のように美しい黒髪。
近づくと甘い匂いがして、もっと近くで感じたくて顔を寄せる。